ファショコン通信

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GASPARD YURKIEVICH 2006 S/S コレクションレポート

取材に至るまでの経緯

2005年10月3日、パリのインターコンチネンタルホテルにて、ギャスパーユルケビッチ(GASPARD YURKIEVICH)の 2006 S/S ショーが催された。このショーは、プレタポルテ・コレクション期間中に公式参加ブランド(ON)として行われたものである。
今回、筆者はパリコレクション期間中にパリに滞在する機会に恵まれ、さらに、当サイトを通じてお知り合いになり、現地でも何かとお世話になったさぼてんさんのお力添えもあって、ショーの準備段階からショーの終了までバックステージにお邪魔させていただき、後日、ギャスパー氏のアトリエを訪問してギャスパー氏に色々とお話を聞かせていただいた上、事後にヒラオプレスの許可を得て記事まで書かせていただけることになった。
会場はインターコンチネンタルホテル内にあり、17:30 からの開催が予定されていた。バックステージに入る機会は滅多に無いので、せっかくの機会であるし、筆者はショー開始より少し早めに会場に到着した。
筆者が到着した時には、バックステージは既にショーの準備で大忙し、といった様相を呈していた。既に、ショーで用いられる服や小物は、着用するモデルの写真が貼られたハンガー掛けに、モデル毎にハンガー掛けされて仕分けられており、いつショーが始まっても問題が無いような状態になっていた。そして、ギャスパー氏やさぼてんさん等のアシスタントの方々は、最終調整の段階で、バックステージ内を走り回りながら、写真や資料を片手にモデルやスタッフの方々にあれこれと指示をしたり、ショーで用いる衣装や小物を微調整するために何らかの作業をしたりしていた。
この時点では、モデルはまだ私服で、その状態でメイクがされていく。そして、ショーが始まる直前に、モデルはメイクをした状態で、衣装を着るのである。モデル達は、メイクをされる合間にも、他のモデルやスタッフと会話をしたり、様々な取材クルーから色々と取材を受けていたりして、それぞれとてもリラックスしている様子。これからショーが始まるとは思えないくらい、余裕のある表情なのが印象的であった。
また、今回のショーでは、女性歌手のダニシシリアーノ(Dani SICILIANO)を招いて、バンドの生演奏と共にショーを行う、といった形式だったので、デザイナー達がショーの準備をしている最中、ステージでは、バンドのリハーサルが行われていた。バックステージからステージの方へと歩を進めてみると、バンドがリハーサルをしている間にも、スタッフが会場の整備をしていることに気付く。ショー開始前は、文字通りあちこちでスタッフが最終調整をしているのだということを、今さらながらに感じた。
さて、そうこうしているうちに、モデル達によるリハーサルも開始。モデル達は私服のまま、ショーで登場する順番にバックステージで整列した後、ひとりずつ、ステージを回って帰ってくる。この段階になると、いよいよショー開始が近づいてきたのだとわかり、徐々に筆者の気持ちも高揚してきた。
そして、その後しばらくすると、モデル1人1人に宛がわれたフィッターに手助けしてもらいつつ、モデルが衣装に着替え始める。着替えが終わったら、リハーサルの時と同様、バックステージで整列し、ショーの準備に入る。その間も、メイクはショー開始直前まで最終仕上げを施しており、まさにギリギリまで準備を怠らない。
他方、モデル達は、整列した後も、取材陣からインタビューをされていたり、ポーズをとりつつスナップ写真を撮影したりしており、直前まで悠然としていた。聞くところによると、モデルは全員 18歳から 20歳くらいであるらしく、パリコレモデルの精神面のタフさと成熟性を、改めて知ることができた。
結局、例によって 予定より30分以上遅れてのショー開始となったが、バックステージにいた筆者は、モデルの動向やメイクの仕事の様子、取材陣の果敢なアタックやデザイナー達の格闘状況等を観察し続けていたので、興奮のあまり時間の経つのを忘れ、時間を持て余すということは全く無かった。

ショーの様子

大柄ヘリンボーン生地ドレスの様子
今回のショーのテーマは、「イット・オール・タトゥーズ・ユー(IT ALL TATTOOS YOU)」。ギャスパー氏の父であるソウルユルケビッチ(Saúl YURKIEVICH)氏の詩のタイトルで、今回のショーに亡き父への想いも込めたのだそうだ。
バックステージで衣装を観ていて、個人的にまず気になったのは、織り調の異なる大柄のヘリンボーン生地で作られたアイテムである。カラーバリエーションはブラックとグレーで、同様の素材を用いて、ワンピースやスカート、パンツやベスト等が作られていた。
ワンピースは右腰部分にリボンのようなアクセントが施されており、前部もエプロンのような構造になっていて、とてもキュートなイメージに仕上がっていた。
(大柄ヘリンボーン生地のワンピースの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
柄タイツとワンピースの様子
また、今回発表されるアイテムでもう1つ気になったのは、グリーンとシルバーが混じった生地を用いて、ハートや星や鳥等の柄を施したタイツである。
バックステージで観た時には、奇抜な素材感とデザインゆえに、コーディネートが非常に難しそうに感じたが、実際にショーでは透け感のあるピンクのワンピースに併せられており、セクシーさの中にもポップなイメージがミックスされて、新鮮味のあるスタイリングだと感じた。
ちなみに、最近はギャスパーのシューズの人気がかなり高くなってきているようだ。今回のショーでも、スタイリッシュでありながらも合わせやすそうなシューズが沢山発表されており、これからもシューズ人気は衰えそうに無い、と感じた。
(柄タイツとワンピースの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
他のアイテムの様子
ショーが始まっても、デザイナーやスタッフの動きは忙しない。ステージから帰ってきたモデルは、即座に衣装を脱ぎ始め、フィッターに手伝ってもらいながら、次の衣装に着替える。そしてまた整列。
出番直前になって、身に付けるべきアイテムをモデルが付け忘れていることにギャスパー氏が気付き、ほんの数秒前にようやく身に付けることができてステージへ、といった場面もあったりして、ショー開始後もバックステージでは緊迫感が漂う。
全てのアイテムの発表が終わって、モデル全員がステージへと出払うと、ショーはクライマックスへ。招待客の拍手に招かれるまま、ギャスパー氏がステージへと歩いて行き、大興奮のままショーは終演を迎えることとなった。
(他のアイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)

取材を終えて

ショーの様子
今回のショーは、サブテーマとして「ピンナップ」というものも掲げられていたようで、ショーの終盤では、右の写真のように、ステージにモデルが全員集合してポーズを撮る、という場面もあったようだ。
筆者はバックステージにいたので、こういう状況になっていたことを知らなかったのだが、後日、ギャスパー氏のアトリエにてショーのDVDを拝見させていただいた時に知ることとなった。最後に、モデルを乗せてステージそのものが回転し始めた時には、思わず驚きの声をあげてしまったことを覚えている。
ちなみに、右写真中央で、マイクを持って歌っているのがダニシシリアーノである。
ギャスパーユルケビッチのアイテムといえば、セクシーでエレガントなイメージがあるが、今回のショーでは、比較的ポップでキュートな印象を受けるアイテムが沢山あり、とても新鮮で、ギャスパー氏の新たな一面を垣間見たという印象を受けた。
何より、個人的にはバックステージでショーを観るという貴重極まりない体験をさせていただけたので、大感激・大満足であった。このような素晴らしい体験をさせてくださったギャスパーユルケビッチ氏に、心から感謝して止まない。
尚、後日、ギャスパー氏のアトリエを訪ねさせていただき、今回のショーについていくつかコメントをしていただいたので、別項に改めて記載することにしたい。
ともあれ、セクシーさとエレガントさの中にもポップさとキュートさを求める方には、2006 S/S のギャスパーユルケビッチをお薦めします。
(ショーの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
GASPARD YURKIEVICH 2006SS

ブランド情報

ギャスパーユルケビッチ(GASPARD YURKIEVICH)