ファショコン通信

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コレクション

「コレクション」の意味について

Paul Smith 2019 S/S コレクション
「1999 S/S ミラノ・コレクション」や「2001-2002 A/W パリ・コレクション」といったフレーズを、ファッション業界においては、よく目にする。といっても、別にミラノやパリを片っ端から集めまくる、という意味ではない。ここでいわれている「コレクション」とは、簡単にいえば、洋服の発表会の寄せ集めのようなものを意味する。即ち、一般には、「コレクション」とは複数のショーの集団を指し示す言葉となっていることが多いのである。

ここまでのことは、ファッションに多少興味をもっている人であれば、ほとんどの人が理解していることであろう。しかし、改めて「コレクションって何ですか?」と問われると、かなりの人が返答に窮するのではないであろうか。

その理由は多く挙げられると思うが、1つには、「コレクション」の定義を正確に理解できていない、というのも挙げられるのではないだろうか。定義もわからずに意味を説明できるはずが無いからである。
そこで、「コレクション」の意味を追究すべく、その正確な意味を以下において、私なりに明らかにしていきたいと思う。

コレクション」とはもともと、「収集、収集物、所蔵品」を意味する。ファッション業界では、デザイナーがシーズンに先駆けて開催するショーや展示会、またはその作品群のことを指す。一般に「コレクション」という言葉を用いる場合、パリで開催されるオートクチュール・コレクションと、ニューヨーク・ロンドン・ミラノ・パリ・東京(開催順)で開催されるプレタポルテ・コレクションを指す。後者は特に「五大コレクション」などと呼ばれている。

ただし、以上の他、世界中のあらゆるところでデザイナーが単独あるいは複数で開催するコレクションも数多くあり、また、アパレル企業の展示会でもコレクションと銘打つものも少なくなく、「コレクション」の意味も多義的であることに留意する必要がある。それを踏まえた上で、本稿では、説明の便宜上、オートクチュールとプレタポルテに分類して考察していきたい。
以下、概観する。

「オートクチュール」と「プレタポルテ」

いわゆるコレクションは年2回、春夏物と秋冬物に分けて発表される。春夏はその頭文字をとって「S/S」(Spring/Summer)、秋冬は同様に「A/W」(Autumn/Winter)などと表記されるのが慣例である。尚、アメリカでは「Autumn」よりもむしろ「Fall」を用いることが多く、日本でもこれに追随して「Fall」を用いることが増えてきている。
コレクションが開催される時期については、オートクチュールかプレタポルテかにより大きく分かれる。以下、この2つに分けて説明したい。

オートクチュールコレクション
オートクチュール・コレクションはパリで1月(S/S)と7月(A/W)に開催される。パリオートクチュール組合(サンディカ)に属する14の正式メンバー(2012年12月現在)の他、いくつかの招待メンバーにしか発表を許されていない、伝統と格式のあるコレクションである。

プレタポルテコレクション
プレタポルテ・コレクションは2月から4月まで(A/W)と9月から12月まで(S/S)の間、ニューヨーク→ロンドン→ミラノ→パリ→東京の順で開催される。いわゆる「五大コレクション」はこれらのコレクションを指し、一般に「パリ・コレクション」というと、パリで行われるプレタポルテ・コレクションを指す。
また、これらとは別に、1月中旬から下旬にかけて(A/W)と6月下旬から7月上旬にかけて(S/S)、ミラノ→パリの順でメンズ・コレクションが行われる。

以上のように、春夏、秋冬ともにニューヨークで幕を開けて、プレタポルテ(五大コレクション)が終わった後にオートクチュールで締める、という感じで各シーズンがローテーションを繰り返していくのである。

結論にかえて

以上がステレオタイプなコレクションに関する説明であるが、冒頭にも述べたように、様々なタイプのコレクションが世界中で行われており、一義的に決められるものではないことも事実である。状況に応じて、適切な捉え方をしていただくことが肝要であると思われる。

また、少々飛躍した議題提起になるが、コレクションに関してよく抱かれる疑問に、「コレクションアイテムは本当に素晴らしいのか」というものがある。確かに、数あるコレクションの中には、真面目にやっているのかふざけてやっているのかの選別が困難なものもあると私も思う。また、そこまでいかなくとも、自分の感性と明らかに合わないコレクションもあるだろう。そういうものにいちいち疑問を抱いていたのでは、楽しいはずのファッションが一気に興ざめになってしまう。あまり深く追究するのは得策ではない。

思うに、コレクションといえども「興行」の1つである。特に昨今のコレクションは宣伝の色合いが色濃くなってきている。とすれば、向うがそのつもりでコレクション活動をするのであれば、こちらもそのつもりで良いのではないだろうか。即ち、コレクションアイテムも「作品」ではなく「商品」として見れば、自分にとっての「善悪」を判断するひとつの指針になるのではないかと思うのである。
もちろん、これはあくまでも個人的な意見であるので、ご自分なりの意見があるのであれば、そちらを優先されるのが良いであろう。あくまでも、答えに窮した方々のささやかな道しるべになれば、という意味での提案である。

つまるところ、観て楽しければそれで良いのが「コレクション」なのである。