ファショコン通信

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araisara 2014 S/S ショーレポート


日時: 10月17日(木)19:45~
会場: 明治記念館
今季のテーマは「幻想曲」。

幻想曲 GONSO – KYOKU

全てを遮る境界線か 全てを繋ぐ一筋の光か
<天>と<地>の境
<過去>と<未来>の狭間
<人>と<自然>の間に在るもの
国境・時代・空間
この世界のすべての境界線が
夢幻だとしても、
空はどこまでも繋がり
風はいつまでも香りを運ぶ。
知識や想いは時を越え
文化や思想は海を渡る。
舞台を変えようとも
表現はただひたすらに
その本質を伝えるのみ。
時の流れはゆるやかに
その容姿を常に変えながら
うたかたの今を乗せ ここに在る。
風に乗る霞のように
優雅で たおやかに、
現実と幻の狭間を行き来する
変幻自在な旅のように。

上記のテーマを反映し、形式にとらわれずに幻想のまま自由に作曲した作品である幻想曲同様、相反する2つの要素の境界線にとらわれずにそれらを融合し、現代でしかできない優雅な生活と都市生活の忙しさの境界線を意識した現代的なリラックス感や自然と人との境界線で生み出された現代的で強い美しさ等、新たな世界を表現したアイテムを発表。
例えば、パターンとしては、ヨーク部分で上下に切り替えられたアイテム、上身頃の前後でホワイトとブラックの相反する色で切り替えられたアイテム、両脇部分のみシースルー生地が用いられたアイテム等を発表。プリントやディテールとしては、ウエストの後ろ部分のみにベルトのモチーフがデザインされたアイテム、上部がブラックで裾にかけてホワイトのプリントが施されたアイテム、鮮やかな配色のテープでパイピング等することにより生み出された直線的な縁取りや切り替えが印象的なアイテム等を発表。総じて、アイテム内に意識的に相反する要素による境界線を生み出し、異なるカラーリング・素材感・プリント柄を併存させつつ、両者の間に自然な変化をもたらすことで、見る側にその境界線を意識させない配慮がなされたアイテムが多く登場していた。また、前回のコレクション同様、職人の手による手捺染の持つ奥行き感・立体感と機械による最新のインクジェットの持つ鮮明多色の色合い、即ち、職人にしか表現できない味と機械にしか出せない緻密さの両者を融合し、それぞれの良さを調和させることで、より進化したプリント柄を生み出した生地を用いたアイテムも発表。こちらも、今季のテーマを反映し、職人と機械という一見相反する技術が融合された、現代でしか作れない新たなアイテムとなっていた。
今回、会場として明治記念館を選択したのも、この会場が明治憲法の審議場として利用されていたことをデザイナー自身が知り、まさにそこが江戸から明治へと移り変わる境界線の1つともなった場所であると感じたからということに加え、館内の壁画を修復しつつ現代の中でも歴史的建造物として存在し続けているという、過去と現在を繋ぐものとしての存在としてこの場所を捉えたとのことで、こちらも今季のテーマを意識した上で採用したものであった。また、ショーの演出もフランスのアーティストが手掛けているそうで、こちらも日仏の異なる世界の者による合作なのだそうだ。
今回も「幻想曲」というシーズンテーマに沿って、パターン・素材・プリント・柄・アイテムイメージ・会場選択・ショー構成の総てが、境界線の存在とその融合という視点から丁寧且つ有機的でありながらもさりげなく紡ぎあげられており、これにより全体的な印象に深みを持たせつつ軽やかなイメージが出されるように仕上げられた、圧巻のコレクションであった。