araisara 2013-2014 A/W ショーレポート
日時: 3月18日(月)21:00~
会場: 渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホールA
今季のテーマは進化創造。
進化創造
ものの香を感じる人がいる
かいだ薫りは心の深みに染み渡り
ものの本質を心に伝える
人の心の香は実に気持ちの良い薫りとなり
他がものの心をも澄み渡らせる
古より伝わる「伝統技術」と、
人類の叡智を積み重ねた「進化」は、互いに等しく美しく、
今シーズンのテーマ「進化創造」は、
両者の魅力を融合させ、昇華させる為の取り組み。
上記のテーマを反映し、例えばオリジナルの時織の柄をいかしたアイテムは、職人の手による手捺染の持つ奥行き感・立体感と機械によるインクジェットの持つ鮮明多色の色合い、即ち、職人にしか表現できない味と機械にしか出せない緻密さの両者を融合し、それぞれの良さを調和させることで、より進化したプリント柄を生み出したのだそうだ。また、衣服に日本画を反映したことについては、絵画を額に入れて鑑賞するのも良いが、その絵画を衣服に反映して身に着けるという行為を提案することで、「着る」という行為の進化形を考え・伝えるという願いが込められているのだそうだ。個々のアイテムもドレープやギャザー、ベルト使い、レザーピース使いや切り替え等のディテールで遊びと奥行き感が表現されていた。
東京フィルハーモニー交響楽団による生演奏「連作交響詩『我が祖国』より ウルタヴァ」も、2つの源流が次第に折り重なって支流になり最後は大河と進化していくというイメージのものであり、かつ楽団による演奏そのものも複数の人がそれぞれの役割を果たすことで1つの楽曲が生み出されて進化していくというものである、と捉えたのだそうで、今季のテーマを意識した上で選曲がなされ、生演奏という演出が採用されているというのが注目される点である。
東洋の伝統技術を世界へ発信する、というブランドの根本理念を基軸として残しつつ、「進化創造」というシーズンテーマに沿って、素材・プリント・柄・アイテムイメージ・舞台演出の総てが、意識して丁寧かつ有機的に反映してまとめあげられた、モードの醍醐味を体感できる、他の道標ともなり得る素晴らしいコレクションであった。