ファショコン通信

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THEATRE PRODUCTS 2007 S/S コレクションレポート

取材に至るまでの経緯

2006年9月4日、東京・新宿にて、シアタープロダクツ(THEATRE PRODUCTS)の 2007 S/S ショーが催された。このショーは、東京コレクション(日本ファッションウィーク)期間中に行われたものである。
筆者は、THEATRE PRODUCTS 2006 S/Sの取材をさせていただいて以来、毎シーズン、コレクションを拝見させていただいている。シアタープロダクツは、そのアイテムのデザイン性の高さもさることながら、毎シーズン、ユニークでオリジナリティのある形式でショーを発表しているので、個人的にはいつも非常に楽しみにしているブランドの 1つである。
会場は 伊勢丹新宿店の本館屋上アイ・ガーデンであり、15:30 からの開催が予定されていた。開場30分前には、既に会場の前に長蛇の列ができており、回を追うごとにさらに期待感が増していることを表わしているかのようであった。
会場内に入ると、真っ白いキャットウォークの上に、これまた真っ白いベンチと街灯が 2個ずつあるのに気が付く。いつも個性的なショー形式のブランドだけに、ショーの中でそれがどのように用いられるのか、とても気になってくる。予定より数分ほど遅れてのショー開始となったが、キャットウォークの上のベンチと街灯に気を取られていたので、それほど時間は気にならなかった。

ショーの様子

アイテムの様子
今回のショーのテーマは、「ネバーエンディング(NEVER ENDING)」。現実の世界ではあり得ないファンタジー、均一なパステルカラーで表現される幸福感しか存在しない非現実な世界を表現したのだそうで、個々のアイテムのディテールにも、非現実やファンタジーなイメージの物が多く取り入れているのだそうだ。
例えば、右写真のコットン70%・リネン30%天竺の、ボタンが無い仕様のポロシャツでは、胸の部分に白い花のボタンやレーヨンのコードで包んだバックルが装飾的にあしらわれ、敢えてボタンやベルトとしては機能させないことで、非現実的なイメージが表現されている。また、ユニークさもさることながら、薄い生地使いが春夏らしい風合いで、肌触りも非常に良いため着心地も良いアイテムとなっていた。
また、コットン50%・ナイロン50%のスカートは、3つの Tシャツの袖をそれぞれ中に巻き込んで縫い合わせ、襟刳りを伸ばした部分をウエストにしたもので、構造的にもシルエット的にも非現実的なものになっている。
さらに、複数のバックルを連続して装着しているベルトや、サンバイザーの花、サンダルのバックル等のディテールにおいても非現実性が表現されており、とても丁寧なスタイリングとなっているのが興味深いところである。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
アイテムの様子
左写真では、個人的に特に印象深かったのが、モデルが右手に持っているバッグである。
これは、寄木と呼ばれる手法で作られた、牛革と木でできたバッグなのであるが、筒状の部分は全てラミネートコーティングが施された木製で、ブランドのロゴはプリントではなく、異なる色のパーツをはめ込むことで表現されている。複数のパーツを組み合わせたとはいえ、その継ぎ目は全く気にならず、あたかも一枚の板であるかのような手触りに仕上がっている点も秀逸であった。その見た目もさることながら、素材自体までもが、ある意味で非現実的であり、とてもユニークでオリジナリティ溢れるアイテムとなっている。尚、右上写真のベルトにも同様の素材が用いられている。
また、パンツの裾やパンプスのトゥ部分に付けられたバックルや、何重にもステッチ補強がされているつば広のコットン天竺のキャップ等にも、非現実的なイメージが表現されており、細やかさが好印象なスタイリングである。
(アイテムの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
アイテムの様子
今回登場した全てのアイテムの中でも特に圧巻であったのは、右写真にある、コットン100%の長方形のレースのパーツをいくつも繋ぎ合わせることでできたケープ状のアイテムである。このパーツは、角にある突起状の部分を他のパーツに引っ掛けることで繋ぐことができるようになっていて、したがって、個々のパーツを縫合しているわけではないので、気を付けないとパーツが全てバラバラになってしまうそうだ。
そして、これら全てのパーツを、デザイナーが自ら 1つ 1つ繋ぎ合わせたのだそうで、それを聞いた時には、これはもはや、気の遠くなりそうな話、という意味で非現実的でファンタジーなアイテムであると、筆者は感じずにはいられなかった。
ちなみに、このレースのパーツには「T」という文字が入っているものと、「P」という文字が入っているものがあるそうで、この辺りの遊び心も適度にファンタジーであると感じた。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)

取材を終えて

フィナーレの様子
上記に記したもの以外でも、アサガオの形にくり抜かれた部分にペイズリー柄のネットを付け、襟部分にメロウ始末を施したワンピース(画像をみる)等、細やかなディテールに配慮した非現実的なイメージのアイテムが多数登場し、最後まで飽きの来ないショーであった。
尚、今回のショーは演出として「待ち合わせ」をイメージしていたのだそうで、冒頭で述べたベンチ等は、そのイメージを表現するために設置されていたのだそうだ。確かに、モデルはベンチに座って待つような素振りを見せたり、時計を見るようなジェスチャーをしたりしていたのが思い出される。
相変わらず、アイテムだけでなく、ショー形式でも観客を楽しませてくれるので、この点でも筆者はシアタープロダクツを個人的に好んでいるところである。
ともあれ、適度に非現実的なディテールとポップで軽やかな色使いの、ファンタジー感溢れるアイテムをお探しの方には、2007 S/S のシアタープロダクツをお薦めします。
(フィナーレの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)