KAMISHIMA CHINAMI 2008 S/S コレクションレポート
2007年8月30日、東京・原宿にて、カミシマチナミ(KAMISHIMA CHINAMI)の 2008 S/S ショーが催された。このショーは、東京コレクション(日本ファッションウィーク)期間中に行われたものである。
筆者は最近数シーズン、このブランドのショー及び展示会の訪問を続けているので、スタッフの方々とも顔見知りになってきており、他のブランドとは比べて、より親近感を個人的に抱くようになってきているブランドの 1つである。また、素材やパターンに対する拘りが他のブランドと比べて独特であるところも、筆者が特に共感している点でもある。
会場は原宿クエストホールであり、14:00 からの開催が予定されていた。開演 10分ほど前に筆者が到着した頃には、会場内外には既に多くの来訪者が訪れていた。
結局、予定より十数分ほど遅れてのショー開始となったが、配布された資料等に目を通していたので、それほど苦にはならなかった。
ショーの様子
今季のショーのテーマは「クール・トロピックス(COOL TROPICS)」。燦燦とした光、鮮やかな輪郭の影、太古から変わらぬ生命等を表現したようで、その表れとして、躍動感と生命感溢れるアイテムが多く登場した。また、クールというキーワードからオフホワイトやシルバーの輝きのある色合いが、トロピカルというキーワードからレッドやイエロー等の暖かみのある色合いが用いられていたのが印象に残った。
例えば、右写真のカットソーは、80/- 微強燃天竺のオフホワイトの前身頃に、ホワイトとシルバーのビーズやスパンコールによる刺繍が施されており、シルエットと色合いと刺繍が相俟って、非常にクールなイメージに仕上げられている。尚、この刺繍はインドの職人が手作業により施したものであるが、極めて複雑且つ丁寧な作品になっており、一見の価値があるものといえる。
尚、カットソーに合わせられているオフホワイトのパンツは、80/- パラシュートクロスと呼ばれる、均一性のある超長綿を使用した高密度で織られた生地を用いたものであるが、極めて肌触りが良く、また、ポケットの内布が敢えて外側に出されているのがユニークであった。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
また、今季のショーのサブテーマは「リトルジャングル」であったそうで、その意味合いから、クモのモチーフのリベット使い(画像をみる)やナナホシテントウのプリント(画像をみる)、ハスのモチーフのプリント(画像をみる)や食虫植物であるウツボカズラのモチーフのプリント(画像をみる)を施したアイテムが散見され、さらに、ジャングルというキーワードから「旅」をイメージしたタスキ掛け仕様のジャケット(画像をみる)等も登場した。尚、ウツボカズラのモチーフのプリントのシリーズは、先シーズンに引き続き、365万色使いのキュプラ100%の生地が用いられている。
左写真のジャケットは、トカゲのモチーフのリベット使いのネックレスを用いたスタイリングであるが、モチーフを形作るためのリベットの多さに驚くと共に、製作者の苦労に思いを巡らさずにはいられない仕上がりとなっていた。
(アイテムの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
そして、個人的にとても興味深かったのが、右写真にある、レーヨン53%・コットン33%・リネン7%・ラミー7%の、4種類の糸で高密度に織られたフォーミックスクロスのオフホワイトのコートである。
このコートは両肩部分からウエスト部分にかけて、コイル状の金具を押し縮めたパーツが矢印状に縫い連ねられており、ショーのテーマであるクールなイメージがその色合いと形とで表現されているアイテムとなっている。コイル状のパーツは 1つ 1つ手作業で縫い付けられたものだそうで、こちらも上述のトカゲのモチーフ同様、仕事の細かさに驚かされた。
尚、腹部に巻きつけているベルトにも複雑なスパンコール刺繍が施されており、とにもかくにも手間が掛かった力作揃いのスタイリングとなっているのが印象的であった。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
取材を終えて
以上に記してきた通り、今回もまた、ストイックなまでの素材やディテールへのこだわりが随所に見られるアイテムが続々と登場したシーズンであった。また、今シーズンは特に、スパンコールやビーズに始まり、コイルまでを使用した非常に細かな手刺繍使いが多く見られ、従来とは少し異なったこだわりも見られたのが個人的には面白いと感じられた。
ただ、こういった細かな仕事は、個々のアイテムが暗い中を一瞬で通り過ぎてしまうショーという形式では、ほとんどの来訪者にあまり気付かれずに終わってしまうことがとても多いように思われるので、そういった意味では、スポットを浴びきらなかったアイテム達が少々気の毒な気がしないでもないところではある。そこで、こういったアイテムの真の素晴らしさを知るという意味でも、もし時間があるのであれば、上記のアイテムを実際に手にとってご覧になることを、筆者はお薦めしたい。
ともあれ、クールな輝きとトロピカルな暖かみに包まれた、生命の力が溢れる、技術と根気とこだわりのこもったアイテムをお探しの方には、2008 S/S のカミシマチナミをお薦めします。
(フィナーレの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)