ファショコン通信

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ato 2007-2008 A/W コレクションレポート

取材に至るまでの経緯

2007年3月13日、東京・日本橋にて、アトウ(ato)の 2007-2008 A/W ショーが催された。このショーは、東京コレクション(日本ファッションウィーク)期間中に行われたものである。
会場は日本橋特設テントの「SOUTH(小)」であり、20:00 からの開催が予定されていた。筆者は開場時刻より少し経過した辺りの時間に会場に到着したのだが、開演までまだ十数分あるというのに、会場内外には既に来訪者が多数集まっており、あらゆる意味で旬なこのブランドの注目度を物語っているようであった。
会場内に入ると、多少落とされた照明に、平坦な白いキャットウォークという、シンプルなステージ構成であることに気付く。服だけを見てほしい、という、アトウの基本理念が垣間見られるその構成に、妙に納得したりしながら、ショーの開始を待った。
結局、予定より二十数分ほど遅れてのショー開始となり、夜遅くであったせいもあって、少し待ちくたびれた感もあったが、ショーが始まる頃にはそのことはもう気にならなくなっていた。

ショーの様子

アイテムの様子
ショーはレディースウェアとメンズウェアを 1つのショーで同時に発表するスタイル。今回のショーでのレディースウェアのテーマは、「She Wants to be harder」。強く魅力的な女性のイメージを追及し、大きく、ライダース、スウェット、テーラードジャケット&ミリタリーの 3つのスタイルに分け、男性的なモチーフを使用し、それぞれに強い女性像を表現したのだそうだ。
例えば、右写真のジャケットは、男性用の礼服であるタキシードジャケットのようなカッタウェイフロントの、和紙混ジャカードのネイビーのテーラードジャケットであるが、袖丈を敢えて短くし、袖口にファーを取り付けることで少し崩した感じを出し、女性的なニュアンスのアイテムに仕上げている。レーヨンとコットンと和紙が織り成す独特な風合いがユニークなアイテムである。
また、インナーに着用しているのはレーヨン100%のドルマンスリーブのグレーのカットソーであるが、胸の部分にビーズで飾り付けをしたり、裾部分をリボンで絞れるようにしたりと、こちらもディテールに工夫を加え、これにコットンアンゴラ天竺のグレーのサルエルパンツを合わせることで、さらにフェミニンに着崩したイメージが表現されていた。
尚、このサルエルパンツと同型で生地違いのウール100%のグレーのアイテムが、同色同素材のカシュクールカットソーと合わせたスタイリングの中で登場していた。このカットソーも、フードが付いていたり、袖口にブラックのフリルをあしらったする等、フェミニンな崩しのディテールが施されていた(画像をみる)。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
アイテムの様子
左の写真は、ウール77%・ナイロン13&・カシミア10%のカシミアカルゼのダッフルコートであるが、所々でレザーを用いたり、肩部分に肩章を交差させて取り付けたり、袖を短めにしたり等、男性的な印象を与えるディテールを用いつつ、微妙な点でバランスを崩すことで、女性的なイメージに転化されるように工夫されている。
また、インナーに合わせているポリエステル80&・コットン20%のノースリーブシャツは、裾部分にビーズを縫い付けたり、首周りにタックを寄せたり、フリルを付けて襟部分を高くしたりして、男性的なアイテムをフェミニンなイメージにし、これにアンゴラメルトンのミニスカートを合わせることで、全体としてセクシーなニュアンスが表現されるように仕上げられていた。
(アイテムの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
アイテムの様子
他方、今回のショーでのメンズウェアのテーマは、「functional clothing」。機能性の中にあるフォルムの美しさをデザインモチーフにし、コーディネートはスキニーパンツやサーマル素材を使ったスパッツの重ね着等をドレッシーなアイテムと組み合わせ、アンバランスなスタイルを提案。さらに、スノーブーツスタイルのスニーカーを、機能着の象徴的なアクセサリーとしても使用し、脱力感あるアイテム同士を巧くまとめることに挑戦したのだそうだ。
例えば、右の写真は、ウール89%・アクリル10&・ポリウレタン1%の千鳥格子のスリーピーススーツであるが、ポリウレタン等が入っているのでストレッチが効いており、そのため、定番のスーツの型よりタイトに作られている。そうすることで、通常のスーツよりもよりスポーティで機能的なニュアンスを表現し、これに機能着の象徴的なアイテムであるスノーブーツスタイルのスニーカーをブーツインして合わせることで、ユニークなバランスのスタイリングとして提案されていた。
尚、同様のニュアンスのスタイリングとして、コットンワッフル素材を用いたパンツを、ベストとネクタイに合わせたスタイルも提案されていた(画像をみる)。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)

取材を終えて

アイテムの様子
上記に記したもの以外でも、レディースではハードなイメージのラムレザーのアイテム(画像をみる)等、メンズでは襟部分にジッパーを付けて前身頃を閉じられるようにしつつ、途中でジッパーに切れ目を設け、前屈みになった時に邪魔にならないよう、機能面にも配慮されたロングジャケット(画像をみる)や右前身頃部分に、通常は使用しないジッパーを取り付け、着脱・交換可能なインナーベストのジッパーをその部分に留めるように工夫されている、襟元にリアルオックスファーの取り付けられたジャケット(画像をみる)等、それぞれテーマに沿いつつ、趣向を凝らしたユニークなアイテムが多数登場し、ブランドとしての幅の広さを大いに感じさせる内容のショーであったと感じた。
また、特に重衣料について、どのアイテムも非常に軽く、着心地が良いように配慮されていたのが、筆者としては好印象であった。
ともあれ、男性的でハードなイメージのレディースアイテムや機能的でスポーティな着心地良いメンズアイテムをお探しの方には、2007-2008 A/W のアトウをお薦めします。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)