ファショコン通信

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LIMI feu 2007 S/S コレクションレポート

取材に至るまでの経緯

2006年10月5日、東京・恵比寿にて、リミ フゥ(LIMI feu)の 2007 S/S ショーが催された。このショーは、東京コレクション期間中に行われたものである。
リミ フゥは数あるドメスティックブランドの中でも、他とは少し性質が異なるブランドであると、以前から筆者は感じており、それが故に個人的にはデビューコレクションから特に気になっていたブランドである。そこで、JFW も 発足から 1周年を迎えたことであるし、これを期に、今までショーを見て来なかったブランドについても幅広く取材をしていこうと考え、リミ フゥのプレスの連絡先を調べて、事前に取材の申入れをして、招待状を送付していただいた。
会場は恵比寿のザ・ガーデンホールであり、19:00 からの開催が予定されていた。ショー当日はあいにくの激しい雨模様であったが、開場直後に筆者が現地に到着した時には、既に長蛇の列が形成されていた。以前から小耳に挟んではいたものの、実際に目の当たりにすると、リミ フゥのファンのエネルギーの大きさに驚かされる。このブランドの特異性を表わす象徴的な風景であるように感じた。
会場内に入ると、広く真っ白なキャットウォークの中央に、大きな正方形状の段が設置されているのに気が付く。どうやら、入口付近とカメラマン席付近との計 2回、モデルは段を上り下りしなければならないようだ。通常より一段高い位置をモデルが歩くので、観る側にとっては親切な作りである。モデルにとっては厳しいステージであろうが、観客に対するこういった気配りが心地良い。
結局、予定より二十数分ほど遅れてのショー開始となったが、ファンのエネルギーに気を取られていたので、それほど時間は気にならなかった。

ショーの様子

アイテムの様子
今回のショーは、ウエストライン、ヒップライン、ショルダーラインから鎖骨、首筋等々に至るまでの女性の曲線をテーマとしていたそうで、そのイメージから、登場したアイテムも、女性らしいラインやディテールが特徴となっている物が多く見られた。また、素材感にも女性らしさが表れており、今までのリミ フゥには余り見られなかった、質感と色合いの薄い素材のアイテムも多く見られた。
例えば、右写真のシャツは、ブザムに薄手の生地で胸当てが施されて二重になっており、男性の礼装用シャツに用いられるディテールが取り入れられているが、薄手のシフォンの素材感とパフスリーブ、素材の質の関係で微妙に光を反射する白く小さなボタンやスタンドカラーを取り入れることで、全体的に見て、より女性らしい風合いに仕上げられている。
また、パンツはジャケットの裾部分のようなパーツが両腰部分に取り付けられており、光沢のあるブラックのボタンは実際に開閉が可能になっている等、捻りのあるユーモアが特徴的である。やや丈が短めのスリムなラインとダブルの裾が女性らしい。100/2 サテンのコットン 100% の生地の光沢感も非常に上品であるし、両腰に付けられたパーツを開くと中にアジャスト可能なベルトが取り付けられていたりする等、触り心地・着心地もとても上質なアイテムとなっていた。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
アイテムの様子
左写真のカットソーは、幅の異なる 2種類のボーダーを組み合わせたようなデザインになっているが、幅の狭いボーダーの生地の上に、間隔を合わせるように幅の広いボーダーの生地を重ねているので、幅の広いボーダーの生地に、幅の狭いボーダーの生地がうっすら透けて見えるようになっていて、より深みのあるアイテムに仕上がっている。そして、異なる形のパーツで前身頃が二重になるような複雑なパターンが採られている上に、生地の分量を多く取っているので、胸部から裾部分にかけて女性らしいドレープが生まれている。
また、100/2 ブロード地のシャツは丸首状になっている襟刳の首筋部分に、さらに襟越とカラーを取り付けてあるというユニークなもので、そのシャツに、リミ フゥには珍しい、ネクタイが合わせられている。
スカートが取り付けられたウールギャバのパンツも相俟って、マスキュリンなイメージにフェミニンなディテールを付与することで、全体的に深みのある女性らしいスタイリングとなっている。
(アイテムの様子は左の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)
アイテムの様子
右写真のワンピースは、女性らしさの最たるものともいえるアイテムである、コルセットのシリーズの物である。各部に膨らみを持たせるために用いられているワイヤーは、女性のインナー下着に用いられる物と同様のもので、それほど硬いものではなく、着心地の面でそれほど難が生じないようにも配慮されている。
肩にかけてあるコットンのストールは、全て手作業により編まれたもので、細い継ぎ目やレーヨンフリンジが繊細なイメージを醸し出しており、甘い女性らしさが表現されている。
上記のようなアイテムに、3本のベルトが取り付けられた、ややハードなイメージのブラックのレザーサンダルを合わせることで、より女性らしさが強調されるようなスタイリングになっているのが印象的であった。
とにもかくにも、今までのリミ フゥには無かった、コルセットドレスというアイテムの登場に、筆者としては驚くばかりであった。
(アイテムの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)

取材を終えて

フィナーレの様子
今回のリミ フゥは、女性らしいイメージということから、ふんわりとたなびく、曲線的なディテールを多く取り入れたのだそうで、フリルの付いたサスペンダーを用いた 100/2 サテンのコットンの七部丈パンツ(画像をみる)や、首にかけられたリボンが印象的な薄手で淡いピンクのアイテムのシリーズ(画像をみる)、大きく背中を開けてボディラインが見えるように工夫する等のディテールが施されたレザーウェアのシリーズ(画像をみる)等に、そういった意識がよく表れていると感じた。
ここ数シーズンのリミ フゥは、稲妻柄や鳩目のシリーズ等々のハードなディテールを取り入れた若々しいアイテムが多く見受けられたが、今回のショーはそれとはやや趣が異なり、東京コレクションにデビューした頃のような、基本的にはシンプルでありながらもよりソフトで大人の女性らしいイメージへと変化を遂げているように感じた。ただ、その中にも上記 2枚目の写真のようなプリントのアイテムも混ぜる等、ここ数シーズンの名残を見せたり、ディテールに深みを持たせる捻りを数多く取り入れる等して、さらに進化したリミ フゥを垣間見たような印象のショーであった。
かような意味で、今回のショーは筆者にとって、今後のリミ フゥのコレクションには今まで以上に注目していきたい、と感じさせるようなものであったといえる。
ともあれ、女性らしい曲線の中にも深みのある直線や細やかなユーモアを兼ね備えた大人の女性に相応しいアイテムをお探しの方には、2007 S/S のリミ フゥをお薦めします。
(フィナーレの様子は右の写真の通り。画像をクリックすると拡大写真を表示します。)